杜甫「兵車行」を、意訳しました。
「兵車は行く」 杜甫(兵車行)
意訳:枣树
車輪ごうごう、馬が曳く。
兵士は弓矢を腰に下げ、
父母妻子の声を背に、
土埃に霞む見返り橋へ。
袖にすがって親や子の、
泣き叫ぶ声は天を突く。
兵士は旅人に吐き捨てる、
「また徴兵さ!」
十五で北方、黄河を守り、
四十となって西の果ての屯田兵。
村長が締めた黒鉢巻きで出征し、
白髪頭で帰還も、すぐさま国境へ!
兵士たちの血で国境が海となっても、
皇帝は領土拡張に憑かれたままだ。
君よ、聞いたか、漢の山東二百州、
村という村はイバラに覆い尽くされている。
働き者の女房が、いくら汗水垂らしても、
畝も畔も崩れて、穀物の収穫は一握り。
秦の兵士は苦戦に耐えるとかで、
男は、犬や鶏、家畜並みに駆り立てられる!
あなたに話しても、
しょせん歩兵の恨み言。
とはいえこの冬もこの通り、
体を休めることさえ叶いません。
県のお役人は租税を取り立てますが、
払える税など有る筈もなく!
今さらながら、男子を生む不幸、
女子を願う哀れ切なさ。
女子に生まれたら隣近所に嫁ぎ、
男子なら戦に斃れ草に埋もれる。
ああ、君よ見るがいい、青海辺りの風景を。
白骨は、拾うもの無く、敵味方無く散乱し、
今日の死者は恨みに悶え、昨日の魂も哭いている。
雨降る岸辺に、しょうしょうと哭いている。
(2014.8.15)
*杜甫の反戦詩です。原詩に沿った訳は、書籍、ウェブ等でお確かめください。
*今から千数百年前に書かれた漢詩ですが、戦争の実相は、現代となんら変わらないのではないでしょうか。
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