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2014年8月19日 (火)

杜甫「兵車行」を、意訳しました。

   「兵車は行く」  杜甫(兵車行) 

意訳:枣树

 

車輪ごうごう、馬が曳く。

兵士は弓矢を腰に下げ、

父母妻子の声を背に、

土埃に霞む見返り橋へ。

袖にすがって親や子の、

泣き叫ぶ声は天を突く。

兵士は旅人に吐き捨てる、

「また徴兵さ!」

十五で北方、黄河を守り、

四十となって西の果ての屯田兵。

村長が締めた黒鉢巻きで出征し、

白髪頭で帰還も、すぐさま国境へ!

兵士たちの血で国境が海となっても、

皇帝は領土拡張に憑かれたままだ。

君よ、聞いたか、漢の山東二百州、

村という村はイバラに覆い尽くされている。

働き者の女房が、いくら汗水垂らしても、

畝も畔も崩れて、穀物の収穫は一握り。

秦の兵士は苦戦に耐えるとかで、

男は、犬や鶏、家畜並みに駆り立てられる!

 

あなたに話しても、

しょせん歩兵の恨み言。

とはいえこの冬もこの通り、

体を休めることさえ叶いません。

県のお役人は租税を取り立てますが、

払える税など有る筈もなく!

今さらながら、男子を生む不幸、

女子を願う哀れ切なさ。

 

女子に生まれたら隣近所に嫁ぎ、

男子なら戦に斃れ草に埋もれる。

ああ、君よ見るがいい、青海辺りの風景を。

白骨は、拾うもの無く、敵味方無く散乱し、

今日の死者は恨みに悶え、昨日の魂も哭いている。

雨降る岸辺に、しょうしょうと哭いている。

 

2014.8.15

*杜甫の反戦詩です。原詩に沿った訳は、書籍、ウェブ等でお確かめください。

*今から千数百年前に書かれた漢詩ですが、戦争の実相は、現代となんら変わらないのではないでしょうか。

 

 

 

 

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