朱自清「漆黒」(原題:黒暗) 訳しました。
1937年の今日12月13日は、日本軍の南京城攻入に始まる南京大虐殺事件が起きた日。軍人、市民など、中国側によれば30万人以上が虐殺されたとし、日本政府とは隔たりがあるようですが、私にはそれについて語るだけの知識はありません。ただ、多くの市民が犠牲になった真実は忘れてはならないと思います。中国メディアは、朝から、特別番組で、追悼式典を生中継していますが、こうしたことに日本のマスメディアが触れることは、私が知る限りないようです。
その立ち位置による決定的な違い、そして消えることのない歴史の重みを改めて思うところです。
今日この日とは直接的な関連性はありませんが、朱自清の一篇の詩を、私の翻訳でご紹介します。
「漆黒(原題:黒暗)」 朱自清
漆黒の夜、
私は独りぼっちで広場の隅に座り込んでいる。
遠くの家から漏れた灯りは、
稲妻の花紋となって、黒い絨毯に散る―。
それは自らが発光する。
彼らの意志に関わらず、
微弱な力で揺れ動き。
ごらん、きらめきを輝きを、
これこそは闇の眼差しじゃないか!
震える闇夜に、
憧憬の人影がぶらついて。
周囲の柏樹は黙しながらも咆哮する。・・・・
おお、―世界の底の声よ。街の声、人の声よ。
遠くから近くから吹き寄せて、
怒涛のように沸き上がり、溶け合いながら。・・・・
闇夜の底で心が波立っているじゃないか!
広場は拡大して、
もうこれ以上の広がりようは無く。
闇夜の底は翼を広げて、
誰も彼らの実態を掴むことは出来ないのだろう?
彼らは慈愛、そしてまた暖かく、
そこにある全ての意志は彼らに覆われて。
自己たる所以のその全てを忘れさせられたのだ。
その一切が漆黒、
「我らと共にある!」
(一九二一年十一月七日、杭州。)
(翻訳:永洋)
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