大空の下。
黒島伝冶「渦巻ける烏の群」(岩波文庫「渦巻ける烏の群 他三篇」所収)。再読。
初めて読んだのは、もう30年近く前になるでしょうか。
これは、1927年の作品です。昭和に直せば、昭和2年。
去年、脚光を浴びた「蟹工船」と肩を並べる、重要な作品だと思います。
短編ですが、その世界は、遥か広く、深く、厳しい。
戦争の本質を衝く、反戦小説です。
そして、人間の存在のなんと儚く、哀しいことか。
春になり、雪が溶け、空を埋めて渦巻く烏の群。その下の大地に横たわるもの。
それを想像するとき、今の、日本が重なります。
私は、テレビから垂れ流される東日本大震災の映像を前に、思うのです。テレビが果たす役割の、なんとむなしいことか。
その、唯一の存在価値は、それが、臭いや空気や、冷たさを、決して正しく伝え得ないことにあるのではないだろうか、と。
もし仮に、彼の地の臭いがリアルに伝わるならば、視聴者の多くは、テレビの電源を切るのでしょうか・・・。
(なぜ、こんなことを私が妄想するか。それは、それこそが、あの死亡者、行方不明者を実感する、入り口になるのではないかと思うからです。)
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